黒い虹と気球

小説や漫画の本中心に感想を書きます (本によって発売直後に感想を書いている場合があります。ネタバレなどにはご注意ください)

『夜行』: 感想

先日発売された森見登美彦さんの最新作、『夜行』の感想を書こうと思います。

 

 https://www.amazon.co.jp/dp/409386456X/ref=cm_sw_r_cp_api_ydAeyb300A6YC

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まさかの二回連続で森見登美彦さんの小説の感想を書くとは思ってませんでした笑。

 

≪概要≫

森見登美彦さんにとっては作家生活10周年の記念作品ということもあり、この作品は「10年」が少しキーワードになってきます。インタビューなどはあまり読んでないので推測ですがそこの所は意識して書かれたのかなと思わせられました。

 

話のジャンルはホラー・SFです。

いくつかの章に分かれてますが、序章で大筋は説明されていて、その後の章はそれぞれ独立したホラー要素を含む体験談となっています。

 今までにない「森見ワールド」と銘打たれてますが、ブログ主はそうは思いませんでした。むしろ昔のモリミーに戻ったって感じです。「きつねのはなし」に似たものを感じました。

 

≪あらすじ≫

僕らは誰も彼女のことを忘れられなかった。

私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間だった。
十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消した。
十年ぶりに鞍馬に集まったのは、おそらく皆、もう一度彼女に会いたかったからだ。
夜が更けるなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出す。
私たちは全員、岸田道生という画家が描いた「夜行」という絵と出会っていた。
旅の夜の怪談に、青春小説、ファンタジーの要素を織り込んだ最高傑作!
「夜はどこにでも通じているの。世界はつねに夜なのよ」

(Amazon 作品紹介より抜粋)

 

 

≪考察≫

綺麗なイラストの表紙ですが、立派なホラー小説です

「長谷川さん」の失踪。「夜行」と呼ばれた絵を巡る様々な怪事件。

読んでいて不思議な違和感に襲われました。

物語もそうなんですが、伏線(?)らしきものが少しは回収されるものの全てが回収されるわけではないところが特に不気味さを覚えました。「あれ?この言葉どこかで聞いたことあるな」と思ってページを見返すとやっぱり書かれていて謎の重層を感じさせられたり。

 

四つの章の最後が全て唐突に終わるのにも不思議に感じました。「えっ終わり?」となる最後です。多くの謎を残したまま章の終わりを迎え、恐らくブログ主以外でも読んだら「どういうことなの...」となる方が続出することでしょう。

 

 

今こうして書いてると「違和感=ホラー」と思ってもいいかもしれません。そういう意味ではホラーの連続ですね、この物語は笑(作品紹介で「怪談」の二文字はとても言い表せていて良いなって思いました。まさに一章づつ「怪談話」を読んでるようです)。

 

読んでる時も、多くの謎を残してからの最終章だったので「これ全部解明されるのか?」と心配してましたが、やはり謎が全て解明されることはありませんでした。解明されなかった部分は読者の想像で補えってことなんでしょう。

 

ネタバレかもしれませんが最初の語り部だった「大橋くん」がようやく最終章で出てきた結果、今までの話が全てひっくり返るような出来事に直面したのには拍子抜けしました。

「夢オチなんて最低!」 いやいやちょっと待て、今までの章の話と合致する部分があるぞ、、て感じでハラハラしながら読み進めていました。

実はブログ主、四章までの話を読んだ後、これらを語った四人は既に死んでるんじゃないかなって思ってたんです(笑)。最初に集まった人たちは全員幽霊で唯一「大橋くん」だけが生きてる人間かと。予想は大幅に外れましたね。

けれど最終章にはちゃんとみんな生きてこの場所にいると書いてあって、それはもう大きなクエスチョンマークが浮かびました。

皆あの状況からどうやって戻ってこられたんだ、と。

よくよく考えたら登場人物、全員普通の人間じゃないです。行方不明になった人や死にそうになってる人がいるのに楽しい思い出話かのように語ってるんですよ。

タイトルにも「夜行」と大きく書かれていますが、この物語は「百鬼夜行」といった並の人間じゃない様子も表してるんじゃないかと思いました(森見登美彦さんの場合、登場人物が普通の人間じゃないのが普通なのかもしれませんが笑)。

 

最終章を読んで、「夜行」の真相は大体解けましたが、肝心の「怪事件」は「怪事件」のまま迷宮入りです。想像で補うにしても補えず、只々怖いです。「きつねのはなし」とはまた違った怖さが読後広がりました。

 

そんな感じで、森見登美彦さん最新作「夜行」でした。色んな意味で深い物語です。賛否両論あるかと思いますが、ブログ主はとても楽しめました。ちょうどハロウィンの季節、怖い小説なんかもたまには良いものだな、と一人で満足してます笑。

 

「夜行 森見登美彦」公式サイト→ http://www.shogakukan.co.jp/pr/morimi/index.html

 

(追記)

本作「夜行」で佐伯(さえき)さんという偽坊主が登場してましたが、最近読んだ本にも同じ名前の登場人物がいたなとブログを書きながら考えてたら、前野ひろみちさんの「ランボー怒りの改新」で同じ名前の人がいたことを思い出しました。森見登美彦さんも推薦してるこの本で同じ名前が出てくるなんて、こんな偶然あるものなんですね笑。

 

『ペンギン・ハイウェイ』: 感想

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫) https://www.amazon.co.jp/dp/B00AR76UAU/ref=cm_sw_r_cp_api_VvK-xb06EJYEA

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ブログ主の大好きな小説の一つです(本棚の見えやすいところに置いてる一冊)。

そもそもこの本の作者である森見登美彦さんの小説がどれも面白い。「夜は短し歩けよ乙女」「有頂天家族」などは一度は聞いたことあるって人も少なくないと思います(有頂天家族は先月アニメの二期が決定しましたね!ブログ主はめちゃくちゃ喜んでました 笑)。

そんな森見さん、京都を舞台にした話を書くことがほとんどなんですが、この「ペンギン・ハイウェイ」は珍しく京都が舞台ではないんです(京都が舞台になってない唯一の話?)。

 

そんな「ペンギン・ハイウェイ」。内容を紹介します。

主人公兼語り部は小学四年生の「ぼく」(アオヤマくん)。森見小説では最年少の主人公です。

舞台はどこかの住宅地。「ぼく」が引っ越してきた時はまだ殺風景な所だったが、しばらくしてどんどん周りに家が建ったらしい。

この「ぼく」はとても賢く(少し変わってる?)、思ったことを常にメモして考える力があります。論理的に物事を考え、頭の中で整理する、他の同級生よりもしっかりとした少年なんです。

語り部からも彼の頭の良さが有り有りと思い知らされます(このブログより数百倍しっかりした文章でブログ主顔負け 笑)。

さて、この「ぼく」は歯科医院で出会った「お姉さん」と仲良しでよく話をします。

実際、「海辺のカフェ」という喫茶店(海の近くではない)でお姉さんと話をするシーンが度々描かれてるんですが、このやりとりがとても笑かしてくれます(にやにやが顔に出て、周りに怪しまれるレベル)。

ここからが本題。

「ぼく」が「お姉さん」といつものようにやりとりをしていた時、突然「お姉さん」がペンギンを生み出す能力があることが発覚します。何事にも興味を示す「ぼく」はそのことに興味津々。それをなんとかして解明しようと試みます。

賢い「ぼく」はこの異常現象を真剣に考え、思いついたことをすぐさまメモし、同級生も巻き込んで「お姉さん」のことを調べ尽くしますがさっぱり分かりません。

「お姉さん」自身も分からないというこの現象を一体どうすれば解明できるのでしょうか?

 

実際のところ、この現象の解明は名目上であって「ぼく」は「お姉さん」と話をするのが大好きなんです。読んでてそれがすごい伝わってきます。

終盤のことを喋るとネタバレになるんですが、そこからも「ぼく」の「お姉さん」に対する思いが感じ取れました。

 

実際こういったSFチックの話はよくあります。海外小説(創元SF文庫とかの小説)を読んだりするとこの手の話に何度も出会うのですが、この話の魅力はそのSF設定にはなく、「ぼく」の考え問題解決の道筋にあります。

先に「ぼく」が"賢い"ということを話しましたが、それは"論理的に物事を考えることができる"という意味です。分かったことをメモし整理しながら思考を積み重ね、結論を導き出す。その過程が小学四年生とは思えない彼の賢さを思い知らされます。

成る程なぁ、、と関心する。中には奇想天外な発想もあって面白い、となるんです。

 

そういやなんで自分が森見登美彦さんの小説が好きなのかという理由もこの「語り」にある気がします。

夜は短し歩けよ乙女」や「有頂天家族」を読んだ人なら分かるかもしれませんが、森見さんの私小説は「語り」が凝っているんです。分かりやすいものもあればちょっと小難しいものもある、けどだからこそ滑稽で面白い。

この「ペンギン・ハイウェイ」も例外ではなく、少年が思ったことを「語り」として読者に見せる。魅せているんです。

 

そんな理由で、この本は自分のお気に入りの一冊になっています。

本屋さんでも「当店のおすすめ!」という帯で並んでるのを度々見かけるので、見かけた際は是非手にとって読んで見てください。

 

 

(追記)

森見登美彦さんが推薦されていた「ランボー怒りの改新」(著: 前野ひろみち)という本を先日読みました。これがまた面白かった笑。奈良を舞台とした短編集なんですがこちらも是非。

『それでも町は廻っている』: 感想

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 それでも町は廻っている(1) (ヤングキングコミックス) https://www.amazon.co.jp/dp/B00GD2GVI4/ref=cm_sw_r_cp_api_jFt1xbNNYVNJF

 

あっ。「もう知ってる」って人います?その人たちは申し訳ありません、、

 

結構前にシャフト制作のアニメにもなってるので知ってる人もそうでない方もいるかもしれませんが、僕としては大好きな漫画のひとつです。けれどあまり周りでこの漫画の話題を聞かないので(好きな人は好きなんでしょうが)、この場を借りて紹介したいと思いました。

 

大まかなあらすじを紹介します。

 

高校生になった嵐山歩鳥(あらしやまほとり)は、昔から世話になっている町内のお婆さんに「喫茶シーサイド」という店でバイトとしてメイドになってくれと頼まれます。なぜメイドなのかと聞くと、「流行りだから」とのこと。

 

しかし、読者の想像しているようなメイド喫茶とは程遠く、メイドはお婆さんと歩鳥の二人だけ。喫茶店なのに紅茶が出されない。いつも来る客は町内のおじさん連中だけ。

その後、歩鳥の友達、辰野俊子(通称タッツン)が喫茶シーサイドで働くことに。理由は歩鳥の幼馴染、真田広章(さなだひろゆき)がこの喫茶店に来るため。

 

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↑広章目当てに喫茶シーサイドで働き始めるタッツン。

 

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↑ちなみに広章は歩鳥が好きだったりします。悲しきかなタッツン...

 

おおまかな予備知識はこれだけです。コメディ漫画なので一話完結の話がほとんどで読みやすい形式になっています。

 

でもこれだけじゃないんです。この漫画をなぜこの場で紹介したいのか。それは他のギャグ、コメディ漫画にはない要素があるからなのです。

 

まず1つ目が「時系列の順番」。

そうなんです。この漫画、あくまで若い巻が一番古い時系列であるとは限らないのです。歩鳥たちが高校一年かと思いきや次の話では三年になってたりと時間がばらばら。けれど不思議と全然違和感なく読めてしまうんです。一話完結型の強みですね。

(時系列がばらばらだと分かるのは歩鳥の髪型や話している内容でわかります)

 

二つ目は「伏線」。

歩鳥たちのささいな行動が今後の話で重要な役目を果たすことがあるんです。なので「あれ?これどっかで見たやつだぞ」というものも前の話など読み返すとこんな所で既に出ていたのか!と驚かされます。

あと歩鳥が推理小説が好きなためか、謎解きのような要素もあるのですが、そういう話が出てくるためか今までの話のコマを丁寧に読んでしまうのも実に作者の思うツボって感じがします笑。

 

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↑歩鳥がお土産(?)で買ってきた訳の分からない置き物。

 

そして三つ目。「オカルト」

この漫画特有の要素の一つです。歩鳥の先輩、紺双葉(こんふたば)や昔から面識のある亀井堂静(かめいどうしずか)という古道具屋を営む人がいるのですがこの人達が大のオカルト好きで、たびたび歩鳥の前にオカルト話を持ち出してくるんです(この二人が出てこなくてもオカルト話はたびたびあります)。自ら率先してオカルト現象を解明しに行ったり、実際に怪事件に遭遇したり。

話によっては本当に怖い話もあったりするのが読んでて楽しいです(怖いのが大好きな人)。

何より部分的に解明できて、完全には解明できていない所が読後にぞくっとされます。

 

以上、この三点がこの漫画の特徴であり、魅力ですね!

 

いや本当に上手くできた話です。読後に思わずおおおって声漏らしてしまうこともあったりするんですよこれ!笑

まだ一巻から揃ってる書店は結構あるので近所のお店で見かけたときは是非読んでみてください。

 

******

最後にこの漫画の個人的に一番面白かった話を紹介します。

9巻、70話として収録されている「大人買い計画」という話です。アニメの方も多分これで有名になったんじゃないかな、、

 

先ほど紹介した古道具屋、亀井堂静の話です。

ある日、夜遅くにパソコンで小説を書いていた静は机の上にあった奇妙な色のお菓子を見つけます。

「毛利屋 べちこ焼き」と書かれたそれを静は何の躊躇もなく一口。

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んん!?旨!!美味しかったそのお菓子を一瞬にして食べてしまいます。あまりの美味しさに慌てて祖父にこのお菓子をどうしたのか聞きました。

祖父曰く、そのお菓子は知らないおじさんから貰ったそう。貰ったのはその一枚だけで変な色だったから食べずに机に置いていたとのこと。

コンビニに売ってるのかなと静は明日このお菓子を買い占めようと計画します。

そして明日、いつもは遅くまで寝ている静も珍しく早起きでコンビニを廻ります。しかしどのコンビニにも「べちこ焼き」は売っていない(歩鳥たちにも珍しいねこんなに朝早くにと言われる)。

結局静は通販で売ってないかインターネットで検索をかけてみます。

しかしヒットは0件。

パッケージの裏に記載されていた製造元の電話番号に問い合わせてみてもこの番号は現在使われていない。

不思議ですね、、、

こうなったら直接、製造元に出向くしかない。

静はパッケージに書かれていた製造元のC県を訪ねます(ものすごい行動力)。

 

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↑お菓子のためにC県に出向く静

 

うなぎが大好きな静はC県の飲食店でうな重を注文、試しに店員に毛利屋というお菓子屋さんを知らないか聞いてみる。

すると店員さんは「もしかしてべちこ焼きかい?」

!?もしやと思ったのもつかの間、続けて店員さんは

「お客さんで三人目だよ。悪いけど毛利屋なんて店は知らないねえ」

東京からはるばるここまで来るなんてよっぽど美味しいお菓子なんだろうねえ、店員さんは呆れた声で言いました。

自分の他にもこの県を訪ねた人が二人いた。

しかしこの県には毛利屋というお菓子はない。

次第に自分は夢を見ているんじゃないかと疑い始めます。これは現実か?本当に私はべちこ焼きを食べたんだろうか。

ついに頭がおかしくなり、結局何の成果のないまま静は東京に戻ることになります。

最後はべちこ焼きの味を再現しようと喫茶シーサイドで歩鳥たちと試作しますが全然違うものばかり。歩鳥からは「これ未来の食べ物じゃないの?現代の技術では作れっこないよ」と言われ物語が終わります。

 

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↑9巻表紙裏に描かれた、ものすごい色のお菓子「べちこ焼き」

 

核心的な部分は省きましたがこんな話です。

真相は何だったのか、べちこ焼きとは何だったのか、気になった方は是非本編を読んでみてください笑。

映画『君の名は』: 感想

時間の都合で観に行けていなかった映画をようやく観に行くことができました。

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『君の名は』という映画です。既に観に行ったという方も多いと思いますが、これがとても良かった。

行ったのは地元の映画館だったんですが、平日にもかかわらず凄い人でした笑(学生さんが多かった)。そういや世間はまだ夏休みなんですね、羨ましい。

 

さて、感想を書こうと思いますがその前に。

 

これより先はネタバレを含みます。まだ作品を観ていない方はご注意ください。

 

「入れ替わった二人」

ある日突然、見ず知らずの人の体になってしまった二人。

一人は田舎暮らしの女子高生、三葉(みつは)。古い伝統やしきたり、カフェがない糸守町での生活にうんざりする日々。遂には、「来世は東京のイケメン男子にしてくださーーい!!!」と叫ぶ始末。

もう一人は都会暮らしの男子高生、瀧(たき)。

父親との二人暮らし。イタリアンレストランでアルバイトをしており、そこでの先輩、奥村ミキに憧れている。

二人は、突然変わった自分たちの体に翻弄されます。

次の日になると、まるで夢を見ていたかのように元の体に戻り、また別の日に不思議な夢のような出来事が起こる。それが繰り返されるうちに二人は気づきます。

「俺/私 たち入れ替わってる!?」

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入れ替わるのは週に2、3回、それでも生活に支障が出ることには変わりありません。二人はお互いに日記を付けるなどして情報を取り合うことになります。

 

<二人がまだ入れ替わる前に、三葉が巫女姿で儀式をするシーンは?でした(口に含んだ酒粕を吐き出すシーンも、若干引いてしまいましたが、これが終盤の最後の入れ替わりを成功させる伏線になるのでまあ...。でももっと他に方法はなかったのかな笑)

あと瀧くん、おっぱい揉みすぎ!!笑
体が入れ替わるたびに三葉の胸を揉んでいるので妹の四葉にも気味悪がられてるのが一番笑いました。最後三葉にばれた時も一回しか揉んでないって嘘ついてましたね笑。>

 

「デートと彗星の接近」

瀧と奥村先輩は三葉の尽力もあって、デートをすることになります。そしてその頃、三葉の町では何千年に一度の彗星大接近、そして地元の祭りが開かれることで皆楽しみにしていました。

三葉はスマホで「デートが終わる頃には彗星が見られるよ」と瀧に連絡します。しかし瀧はちんぷんかんぷんな様子、それはデートとなった経緯ではなく彗星が見られることに疑問を持っているようでした。

 

結局生身の瀧は奥村先輩と会話が続かず、デートは早くに終わってしまいます。

三葉はなぜか祭りに行く前に髪を切ります。

 

<迷惑な客に切られた服を直したり、たくさん会話して奥村先輩と仲良くしていたのは三葉であって、瀧ではなかった。

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三葉はお祭り前に髪を切りますが、これは後に東京に行ったことで瀧への思いを振り切れない自分と決別するために取った行動だと分かります。最初観たときには謎だった場面も最後まで見るとちゃんとその場面の伏線が回収されててびっくりしました。>

 

「三年前の出来事と時間のずれ」

三葉と連絡が繋がらないことに不思議に思った瀧は、自らの体験を元に三葉の町を割り出し、訪れることを決意、そしてその町は三年前に彗星(の割れた破片)の衝突で壊滅し、今では誰も住んでいないことを知らされます。

 

<ここで思わずハッとされた方も多いんじゃないでしょうか。そうです、二人の時間は同時進行じゃなかったんです。
彗星大接近は瀧のいた時間では三年前の出来事であり、三葉にとって瀧の時間は三年後の未来での出来事だったわけです。
そうなると二人は同い年じゃなくて三葉が瀧より三歳年上ということになりますね(そこはあんまり関係ない?)。

そして何より驚かされたのが既に三葉が死んでいたということです。

どうりで連絡が取れないわけだ...>

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「最後の入れ替わり」

瀧は三葉の体になった時に訪れた祠のことを思い出します。そしてその祠に瀧自身の体でいく決意をします。

祠は奇跡的に彗星の衝突を免れていたようで無事残っていました。やっとの思いで祠に辿りついた瀧は、そこで三葉の体でお供えした酒を見つけ、飲みます。

 「早くここから逃げろ!」

すると瀧は三葉の体になっていました。なんともう一度三葉が生きている時間に戻ってこられたのです。瀧は喜び、やはりこの時も胸を揉みます。

テレビを見ると今夜、彗星が大接近するとのこと。体は三葉の瀧は必死に住人にここから避難するように説得しますが、突然のことで皆受け入れてくれません。三葉の体の瀧は信じてくれる三葉の友達と共に住人を避難させられないか考えます。

 

 <三葉姿の瀧が供えた酒の伏線が回収されました。そして彗星衝突のため、住人に避難を呼びかけます。

この場面がこの物語の賛否両論となる場面だと思うんです。他のレビューにもあった問題点を何点か取り上げます。

まず三葉が友達と何か(?)を爆発させるシーン。

いくら住人を助けるためとはいえ、やり過ぎではと思われる方もいると思います。

それから、住人はどうやって避難できたのか。

後で彗星の衝突で住人は全員無事だと伝えられますが、あの状況でどうやって全員避難できたんでしょうか...(三葉の父親を説得しに行く時、既に彗星が分離して衝突し始めてました)。

そして三葉と父親の和解です。

これは回収不足でしたね。これだけは僕も少し残念でした。時間が短いため、やはり本筋と違う部分はカットせざるをえなかったと思われます。

(追記)

先日スニーカー文庫から発売された「君の名は。 Another Side」で映画では描写されなかった父親とのやり取りが書かれているようです。

 

君の名は。 Another Side:Earthbound (角川スニーカー文庫) https://www.amazon.co.jp/dp/4041046599/ref=cm_sw_r_cp_api_pgAXxb0BZFKP9

 

気になる方は是非読んでみてください。>

 

「初めての対面とやり残したこと」

住人を避難させるのに苦労する瀧は山頂にいる瀧(三葉?)を探しに行きます。

生きる時間が違う二人、しかし山頂の上で二人は奇跡の対面を果たします。

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二人はもう二度と名前を忘れないように手の平にマジックで自分の名前を書こうとします。しかし、その途中で瀧の目の前から三葉の姿は消えてしまう...

残された三葉は自分の力で住人を避難させる使命を託されることになりました。

 

<三年のタイムラグがあるにも関わらず、二人が出会った時間は?と思ったんですがなるほど、山頂の上は「あの世に繋がってる」というのはこのことだったんだと、またもや伏線を回収させられました。

マジックで手の平に名前を書こうとしていたんですが、先に瀧が三葉の手の平に書いていたのを思い出し、名前を忘れてしまった三葉はその手の平を見たのですが、

「好きだ」

これじゃ分かんないよ!!笑

気持ちは嬉しいけどちゃんと名前を書いて欲しかった笑。>

 

「大人になってからと物語の感想」

しかし総じて見ると、やはり前評判通りの素晴らしい作品でした。制作側にとってはこの物語の構成が一番難しかったんじゃないでしょうか、100分という短い時間でこんなにも話が展開できるのかと驚きました。

あと物語が無事二人が大人になってから再会し、ハッピーエンドだったのは個人的に嬉しかったです。

新海誠さんの作品は秒速5センチメートルのような現実めいた(新海誠さん自身、バッドエンドとして描いた訳ではないそうですが)終わり方が多いのでこの話もやはり二人は再会できないのかと心配していたのですが、ちゃんと再会してくれて良かった...(瀧が思い切って三葉に声をかけた時「よっしゃ!」ってなりましたよ笑)

そして何と言ってもRADWIMPSの音楽。物語とも非常にマッチしていて聴いていて爽快でした。映画館で聴くとCD音源よりも更に迫力があって良いですね、これが映画館で映画を観る

強みです。

あと先ほど触れてませんでしたが、最後の入れ替わりで瀧が泣きながら胸を揉む所はめっちゃ笑いました。あんなにシリアスだった前までの場面は何だったんだと笑。

 

映画館で観て良かったと思える作品でした。

 

『The MANZAI 上 つきおうてくれ』: 感想

先日ふらっと立ち寄った本屋さんの文庫の新刊コーナーで懐かしいタイトルを発見しました。

 

(P[あ]1-13)The MANZAI 上: つきおうてくれ (ポプラ文庫ピュアフル) https://www.amazon.co.jp/dp/4591151484/ref=cm_sw_r_cp_api_2C-VxbQ9CG4HH

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あまりの懐かしさに思わず手にとってしまいました。

僕が小学生で色々小説を読みだした頃、母親に面白いと勧められて読んだ小説です。

これはなかなか思い出深い小説だとページをぱらぱらめくりながら最初の本紹介はこれにしようと決めました。

僕が持ってるシリーズは1〜6巻まであるんですがこれはそれを上中下の3冊にまとめたものみたいですね(中身を見る限り上は1・2巻、中は3・4巻、下は5・6巻そのままの文章でした)

 

あさのあつこさんと言えば最近『バッテリー』がアニメ化され、注目されてる作家さんです。

多くの方が、あさのさんの小説は最初が良くても最後が雑な傾向にあると仰っていますが、

すみません、僕もそう思ってます笑

だからこそ今回は『The MANZAI』の上巻1/2、1巻分のみを紹介したいと思った次第です。(タイトルにもそう書いてますよね笑)

けれど中下巻もこの上巻を読んで気に入っていただけたら是非読んでほしいです!(どっちやねん)

 

前置きはこのくらいにしてあらすじでも。

 

話は関東から関西の中学に引っ越してきた瀬田歩(せたあゆむ)が秋本貴史(あきもとたかし)に「付きおうてくれ」と告白される所から始まります。

ここだけ読んだらBL小説かな?と思われてもおかしくないですね笑

しかし本当に付き合うのではなく、あくまで「一緒に漫才のコンビ組もうぜ!」という意味での告白です。

この告白された瀬田歩という少年が主人公であり語り部なんですが、しかしなかなかにシリアスな過去を持っていて、、前に通っていた中学で不登校になっていたそうです。

そのためか家族の中でもギクシャクし、重たいムード。

お姉さんはその雰囲気を払拭しようとお父さんに気晴らしにドライブに行こうと提案しますが、その道で事故に遭い、二人は亡くなってしまいます、、

重すぎる...

けれどこのシリアスな過去から一転、歩は貴史とそのクラスメートと出会い、漫才を組むことで徐々に明るい生活を取り戻していきます(実際馬鹿なお喋りがほとんどですが笑)

貴史の他にも、転校生の歩に良くしてくれる森口京美(もりぐちことみ)、その京美のことが好きで歩と同じクラスの高原有一(たかはらゆういち)、同じくクラスメートの篠原友美(しのはらともみ)、蓮田伸彦(はすだのぶひこ)も歩と貴史の漫才コンビ結成に背中を押します(歩本人はものすごく嫌がります)。

そして忘れてはならないのが貴史のことが好きな萩本恵菜(はぎもとめぐな)。通称メグ。

歩と貴史が漫才コンビを組むと知り、歩を敵視するようになります(貴史との会話の中でも歩のことばかり話すので嫉妬します)。

そして困ったことに、歩は敵視されているはずの恵菜に生まれて初めて恋をしてしまいます。

>>三角関係<<

そうです(歩)→(恵菜)→(貴史)→?(歩)という構図です。恋愛小説では良くありますよね、それです。

歩だけでなく登場人物が抱える"いろいろ"な問題も「笑い」で徐々に解決していく、そういった感じで話は進んでいきます。

そして来たる文化祭。貴史と歩はロミオとジュリエットになり、皆の前で漫才を披露することになるのですが、、

 

あらすじ終わり。

 

改めて思うのが、登場人物やその周り全てが生き生きとしていることです。クラスメートだけでなく、先生。病院の患者さん(4巻以降)、貴史のお母さん、お好み焼き屋「おたやん」。これも物語に明るさが与えてくれる一因になっています。

 

そして関西人の自分からしても違和感ない関西弁、そこで行われる会話の掛け合いがとても面白いのです。というかそこがこの話の一番の魅力です。何気ない会話の中でもこんなに笑いはあるんだなと感じさせられる話でした。

 

気になった方は是非読んでみてください。

 

* * *

同作者『バッテリー』のアニメ化が発表された際、『The MANZAI』の映画化はどうなったんだと思われた方も多いんじゃないでしょうか。

そうなんです、この作品、4巻(完全版では中巻の後半)の時点で映画化が企画されていたんです。帯に小さく「映画化も着々進行中!」と書かれていました。

しかし6巻(最終巻)が発売された時、帯には映画化の文字は書かれていませんでした、、

確かに6巻は今までの1〜5巻と比べて展開が早すぎるところはありました。けれどそれを差し引いたとしても、自分にとって素晴らしいと思える作品には違いないので、発表から何年も経ってますが待ち続けたいと思っています。