黒い虹と気球

小説や漫画の本中心に感想を書きます (本によって発売直後に感想を書いている場合があります。ネタバレなどにはご注意ください)

『夜行』: 感想

先日発売された森見登美彦さんの最新作、『夜行』の感想を書こうと思います。

 

 https://www.amazon.co.jp/dp/409386456X/ref=cm_sw_r_cp_api_ydAeyb300A6YC

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まさかの二回連続で森見登美彦さんの小説の感想を書くとは思ってませんでした笑。

 

≪概要≫

森見登美彦さんにとっては作家生活10周年の記念作品ということもあり、この作品は「10年」が少しキーワードになってきます。インタビューなどはあまり読んでないので推測ですがそこの所は意識して書かれたのかなと思わせられました。

 

話のジャンルはホラー・SFです。

いくつかの章に分かれてますが、序章で大筋は説明されていて、その後の章はそれぞれ独立したホラー要素を含む体験談となっています。

 今までにない「森見ワールド」と銘打たれてますが、ブログ主はそうは思いませんでした。むしろ昔のモリミーに戻ったって感じです。「きつねのはなし」に似たものを感じました。

 

≪あらすじ≫

僕らは誰も彼女のことを忘れられなかった。

私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間だった。
十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消した。
十年ぶりに鞍馬に集まったのは、おそらく皆、もう一度彼女に会いたかったからだ。
夜が更けるなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出す。
私たちは全員、岸田道生という画家が描いた「夜行」という絵と出会っていた。
旅の夜の怪談に、青春小説、ファンタジーの要素を織り込んだ最高傑作!
「夜はどこにでも通じているの。世界はつねに夜なのよ」

(Amazon 作品紹介より抜粋)

 

 

≪考察≫

綺麗なイラストの表紙ですが、立派なホラー小説です

「長谷川さん」の失踪。「夜行」と呼ばれた絵を巡る様々な怪事件。

読んでいて不思議な違和感に襲われました。

物語もそうなんですが、伏線(?)らしきものが少しは回収されるものの全てが回収されるわけではないところが特に不気味さを覚えました。「あれ?この言葉どこかで聞いたことあるな」と思ってページを見返すとやっぱり書かれていて謎の重層を感じさせられたり。

 

四つの章の最後が全て唐突に終わるのにも不思議に感じました。「えっ終わり?」となる最後です。多くの謎を残したまま章の終わりを迎え、恐らくブログ主以外でも読んだら「どういうことなの...」となる方が続出することでしょう。

 

 

今こうして書いてると「違和感=ホラー」と思ってもいいかもしれません。そういう意味ではホラーの連続ですね、この物語は笑(作品紹介で「怪談」の二文字はとても言い表せていて良いなって思いました。まさに一章づつ「怪談話」を読んでるようです)。

 

読んでる時も、多くの謎を残してからの最終章だったので「これ全部解明されるのか?」と心配してましたが、やはり謎が全て解明されることはありませんでした。解明されなかった部分は読者の想像で補えってことなんでしょう。

 

ネタバレかもしれませんが最初の語り部だった「大橋くん」がようやく最終章で出てきた結果、今までの話が全てひっくり返るような出来事に直面したのには拍子抜けしました。

「夢オチなんて最低!」 いやいやちょっと待て、今までの章の話と合致する部分があるぞ、、て感じでハラハラしながら読み進めていました。

実はブログ主、四章までの話を読んだ後、これらを語った四人は既に死んでるんじゃないかなって思ってたんです(笑)。最初に集まった人たちは全員幽霊で唯一「大橋くん」だけが生きてる人間かと。予想は大幅に外れましたね。

けれど最終章にはちゃんとみんな生きてこの場所にいると書いてあって、それはもう大きなクエスチョンマークが浮かびました。

皆あの状況からどうやって戻ってこられたんだ、と。

よくよく考えたら登場人物、全員普通の人間じゃないです。行方不明になった人や死にそうになってる人がいるのに楽しい思い出話かのように語ってるんですよ。

タイトルにも「夜行」と大きく書かれていますが、この物語は「百鬼夜行」といった並の人間じゃない様子も表してるんじゃないかと思いました(森見登美彦さんの場合、登場人物が普通の人間じゃないのが普通なのかもしれませんが笑)。

 

最終章を読んで、「夜行」の真相は大体解けましたが、肝心の「怪事件」は「怪事件」のまま迷宮入りです。想像で補うにしても補えず、只々怖いです。「きつねのはなし」とはまた違った怖さが読後広がりました。

 

そんな感じで、森見登美彦さん最新作「夜行」でした。色んな意味で深い物語です。賛否両論あるかと思いますが、ブログ主はとても楽しめました。ちょうどハロウィンの季節、怖い小説なんかもたまには良いものだな、と一人で満足してます笑。

 

「夜行 森見登美彦」公式サイト→ http://www.shogakukan.co.jp/pr/morimi/index.html

 

(追記)

本作「夜行」で佐伯(さえき)さんという偽坊主が登場してましたが、最近読んだ本にも同じ名前の登場人物がいたなとブログを書きながら考えてたら、前野ひろみちさんの「ランボー怒りの改新」で同じ名前の人がいたことを思い出しました。森見登美彦さんも推薦してるこの本で同じ名前が出てくるなんて、こんな偶然あるものなんですね笑。